論文
No.2 ガス会社と協働で地域の一人暮らし高齢者を支える
リーダー:馬場みちえ(医学部准教授)
独自の教育プログラムで高齢者とのコミュニケーションスキルが向上
産学官連携による地域高齢者ケアサポートのための教育プログラムでコミュニケーションスキルが向上したことを福岡大学医学紀要に掲載されました。こちらをご覧ください。
現在、超高齢社会であり、人口減少も始まっています。そのため、超高齢・長寿時代に相応した新しい生き方づくり、新しい社会システムが求められていると考えられます。地域包括ケアシステムの実現に向けて、壮年期世代である地域企業社員の参入が期待されていますが、しかし、企業による壮年期世代による地域の高齢者ケアサポートに関する活動の報告はほとんどありません。
そこで、私たちは、ガス会社の検針員が地域の高齢者に対してケアサポートができるよう、看護の「健康」および「ケアというまなざし」の視点を持った「コミュケーションスキル育成プログラム」を開発し、評価しました。
このプログラムは、講義、演習、実習を段階的な内容で8回実施しました(図1)。評価方法としては、講義及び演習については理解度(質問票)と自由記述を用い、さらに演習と実習についてはコミュニケーション自己評価尺度12項目を用いました。
このプログラムを実施した結果として、「聴く姿勢」、「うなづき・あいづち」、「繰り返し」、「確認・要約」、「不適切なボディランゲージをしない」というコミュニケーション基本は初回に比べ有意に高くなっていました。自由記述では、高齢者の立場や社会貢献への言葉が聞かれていました。検針員は今回の「プログラム」による研修で地域の高齢者の存在に気がつき、個人や家族にとどまらず、社内から地域へとコミュニケーションすることへの関心と高齢者への認識に拡がりがみられていました。検針員のコミュニケーションのスキルが向上したと考えられ、本プログラムが有効であったことが示唆されました。そこから、企業内では、高齢者ケアサポートシステムを構築し、さらなる会社としての地域貢献も促進され、社員一人一人のケアサポートが充実してくるという効果もみられています(図2)。
時代の流れに即応した地域高齢社会での課題に注目し、大学側が発想した高齢者ケアサポートに向けた取り組みは、産学官連携を通し、看護の知を活かし、基本的な有機的なつながりの1つのモデルになったのではないかと考えています。
現在は継続、発展に向けて行政と連携しながら、フォローアップ研修にも取り組んでいます。