福岡大学都市空間情報行動研究所(FQBIC)は、平成12年に文部科学省の学術フロンティア推進事業に認定されて設立され、消費者の回遊行動の実証的研究をもとに、まちづくりの科学的方法を開拓してきました。その一つが、来街地ベース調査にもとづく回遊パターンの一致推定法(consistent method to estimate consumer shop-around patterns from on-site surveys)で、はじめて、まちに何人の入込来街者数(the net number of incoming visitors)があるのかを正しく推定する理論的方法を確立しました。
さらに、消費者回遊行動調査(on-site surveys of consumer shop-around behaviors)を、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島などの九州主要都市の都心部で毎年実施し、調査を通して、地域と協働関係を確立し、これらの地域の課題の解決に取り組んでいます。
これらを背景に、人々のミクロな回遊行動履歴データを、まちの価値(the value of a town)を高めるためのまちづくりに活かしていく、都市エクティマネジメントシステム(town equity management system)の構築を進めています。
現在とくに、IoTによるビッグデータを活用した都心部での個々の人々の回遊移動を実来街者数規模でリアルタイムに計測、推定、予測する仕組みの開発に注力しています。それにともなって、回遊行動モデルも動学化する必要があり、マクロやミクロ経済学の方法や、その因果関係の検証するための統計的方法、さらには、社会的実装のためのクラウドコンピューティング、深層学習やAI、データサイエンスの方法など、様々な方法を駆使し、幅広い観点から、情報と人の行動に焦点をあて、回遊行動の理論的、実証的研究を進めています。
現在5Gをはじめ、WiFi6, LPWAなど各種のワイヤレスアクセスが着々と普及するとともに、センサ、クラウドも活用したIoT(Internet of Things)技術により、様々な社会の課題を解決し、社会を活性化させようとする試みが行われています。ここで大切なことは、理論でうまく行くはずと検討だけするよりも、まず繋いでみて試す、うまく行けば活用を図る、このループを回すといったやり方が有効です。このような取り組みを支えるいわばリビングラボとして、本B5G/IoT基盤活用研究所が設立されるに至りました。本枠組みで産学官の連携を進め、一方で大学として実施している各種研究成果もここで試し、実践的に地域課題の解決を目指します。