福岡大サッカー部の監督を務めるスポーツ科学部教授の乾眞寛氏がはじめて那珂小学校(福岡市)を訪ねたのは、2010年2月のこと。その前年の総理大臣杯全日本大学トーナメント大会でサッカー部が全国大会で初優勝し、当時の校長である古田秀人氏に「子どもたちにサッカーを教えてほしい」と依頼されたことがきっかけだった。
もともと福岡大では、エクステンションセンターの市民カレッジ講座として毎週土曜日に「キッズサッカー教室」を開催し、サッカー部員が子どもたちにサッカーを教えていた。ただ、サッカーを習いたいという子どもに課外活動として教えるのと、学校の正規の体育授業で子どもたち全員に教えるのとではわけが違う。
乾氏らは、運動が苦手な子も含めて全員が飽きずに授業に参加でき、運動能力を高めるためのプログラムを開発。最初は鬼ごっこのような遊びの要素を取り入れて体を動かすことに慣れさせ、徐々にレベルを上げて、最後は学生と一緒にボールを使ったミニゲームを行う。「サッカーは技術だけでなくチームワークやコミュニケーションも大切。全員が力を合わせてゲームに勝つことで達成感も得られます」と乾氏。本場ドイツで学んだ泉原嘉郎助教の協力で、運動神経を効率的に高めるための「コーディネーショントレーニング」も取り入れている。
学生が小学校の体育の授業に携わることにより、責任感が身に付くと同時に教えることの面白さを知り、卒業後の進路として教員を選ぶ学生も増えてきた。小学校の教員にとっても、最新のトレーニング理論や授業の進め方を学ぶよい機会になっており、現在は、教員向けの実技研修も行っています。「今後、子どもの体力・運動能力を経年的に測定し、こうした"出前"授業の効果を検証していきたい」と乾氏は抱負を語る。
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