Team3

No.3
漢方薬の作用メカニズムを解明し認知症予防に役立てる

中高年期~老年期
社会活動支援・活力ある高齢者の研究チーム

リーダー

岩崎克典(薬学部教授、加齢脳科学研究所長)

 認知症の患者数は、団塊世代が65歳以上になる2015年には250万人、2020年には300万人を超すと推定されている 。認知症を来す病気として最も多いのがアルツハイマー病だが、その病因が明らかでないことと相まって適切な治療薬はいまだ開発されていない。

 漢方薬、中でも子供の「不眠」「夜泣き」「疳のむし」に対して古くから用いられている抑肝散に着目して、これが高齢者の認知症に効くかどうかの研究を続けているのが、薬学部臨床疾患薬理学教授の岩崎克典氏だ。

 岩崎氏は、アルツハイマー型認知症のモデルラットを用いて、抑肝散の抗不安効果について検討を行った。ラットは夜行性の動物なので、暗い場所が好きで明るい場所は苦手である。アルツハイマー型認知症モデルラットを暗い部屋に置くと、不安が強いせいかなかなか出てこないが、抑肝散を投与すると比較的早く出てきた。それ以外にも認知症モデルラットは本来の睡眠期である明期に動き回って活動量が多いことを患者の夜間徘徊のモデルとして抑肝散を飲ませると、寝るべき時間帯に睡眠をとるようになり活動量が減った。このように、抑肝散が患者や介護者に大きな負担をかける周辺症状を改善することを動物実験で証明できた。さらに、迷路を用いた実験で、道を間違えずにうまく餌をとるように訓練されたラットの脳内にアルツハイマー病の原因蛋白の1つであるβアミロイドを微量注入すると、せっかく覚えた道筋を忘れて餌取り行動ができなくなる。このようなラットに抑肝散を投与するとうまく餌がとれるようになった。岩崎氏は「これらの実験結果から、抑肝散には記憶障害を改善する作用や抗不安作用、睡眠障害改善作用があることを動物実験で実証することができました。さらに詳しくメカニズムを調べた結果、抑肝散が脳内では記憶に関わる海馬のアセチルコリン神経を高め、周辺症状に関わる前頭前野のセロトニン受容体に作用することを突き止めることができました。漢方薬も西洋薬と同じようなメカニズムで症状を改善することが分かりました。しかも、複数の症状を1つの漢方薬で治せることを実験で証明できたのです。」と話す。抑肝散は、認知症患者のBPSD(行動・心理症状)を軽減する効果があることが臨床試験で認められ実際に患者さんに使われていますが、そのことを作用メカニズムの面から裏づけることができたわけだ。

 岩崎氏らの研究により、抑肝散には記憶をつかさどる脳の海馬という部分の細胞死を抑制する作用があることや、記憶を改善する作用があることも明らかになり、抑肝散はアルツハイマー病の中核症状である記憶障害にも効果があるのではないかと期待されている。「漢方にはもともと医食同源という考え方があります。これは、病気になってから薬を飲むのではなく、病気にならない体づくりのために食べることから予防や治療が始まりますということです。認知症の予防には食に加えて漢方薬を用いた早い時期からの治療が必要です。」と岩崎氏は展望する。

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